索の細道 - 会話
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### まえがき
会話にはリズムがある。何を今更、と嘲笑混じりの鼻息が微かに耳をかすめたが、私は靡かない。
なぜなら、いつだって “本当” は実感が伴わない限り “嘘” だからだ。
### 本編
言語が通じる生活も苦しいが、言語が通じない生活も等しく苦しい。
英語は “スピード” が圧倒的に速い。日本語に比べて、言葉の質量そのものが軽やかに感じる。それゆえ感情が乗せやすく、それが “バイブス” の違いとして表出されるから、どうにも腹の据わりが悪い。加えて、「どういうこと?」とか「気にしないで」といった言葉で会話が止まる時間も短い。結果として、ハイスピードかつリズミカルなパス回しが展開される。気がついたころには、もはや会話に参加する機を伺うどころの話ではない。私はただ、そこにいる。
会話には “リズム” がある。言語が通じると見落としがちだが、これは紛れもなく “本当” のことである。
言葉が通じるときの会話は、開示された情報と、自分のもつ哲学や価値観などの “変数” をチューニングして、どれだけ双方にとって最適な言葉を紡げるかのゲームになりがちだ。その間、”スピード” や “リズム” といった音楽的な要素への認識が遅れがちになる。
一方で、言葉が通じないときの会話は、ほぼ強制的に多くの変数を固定しなければならない。単に聞き取れないがゆえ、推測が混じるという側面もあるが、どちらかというと、その会話の “スピード” や ”リズム” を維持する方向に意識が向く。できるだけ手短に伝えたり、相槌を意識したり、追いつけない時は表情で返したり、という具合に。
もう一つ、変数を固定するための重要な要素がある。それは “関係性” である。関係性は “グルーブ” を生み出す。
暇だろうから小話? - unknown
私はこのメッセージを見たときに「友達だ」と思った。一見乱暴にも思えるが、お互いの関係性をもって変数をいくつか固定しているからこそ、成立している。実に気持ちがいいグルーブだろう。
変数を固定することは、言い換えれば、そこに “信頼” をおくことでもある。そうすることで普遍的な “スピード” や “リズム“を超えて、独特な “グルーブ” が生まれる。実際、そういう関係性はかなり貴重だと思う。
もしチューニングが合っていないと、返信するのが億劫になるし、話す内容も限られてくる。関係性はいつまで経っても透明なままである。
関係性によってグルーブが変わるように、関係性そのものもまた、どれだけ言葉で規定しようとも、“タイミング” によって変わる。ある時はグルーブよりも言葉の紡ぎのほうが “誠実” で、またある時は紡ぎよりもグルーブのほうが、信頼を預けるという点において、等しく ”誠実” であったりする。
まさに “スピードバイブスパンチライン”。これを機に読もう。
### あとがき
もちろん、言葉自体に意味はない。実際には、私も “お前” も、言葉への傾倒と、それによる虚しさゆえの忌避との往来を繰り返しているだろう。言葉を忌避したいムードのとき (あるいは言語が通用しないとき)、ここで示したような音楽的側面は、遍く処方箋になり得るかもしれない。(身体性もひとつ処方箋ではあるが、それだと関係性が限られてしまう)
いつだって音楽は救いだ。
とはいえ、私は “紡ぎ” を諦めたくはない。それは “テクスチャ” になり得るからだ。ただずっとそうしていると疲れる。もちろん、そんなことはわかっている。しかし、いつだって “本当” は実感が伴わない限り “嘘” なのだ。
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